第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……でもさ、あいつは今、カメラに夢中だろ? 専門学校に進学も決まって自由なんだよ。そんな時に俺みたいな『受験という名の檻』にいる奴が、あいつを縛るようなこと言えねーだろ」
「おーおー、殊勝なことで。でもよ」
夜久がニヤリと笑い、黒尾の肩を小突いた。
「あいつが毎日そそくさと帰ってるの、受験勉強の邪魔したくないからじゃないのか? お前のこと、一番気にしてんのはあいつだと思うぜ」
黒尾は一瞬、目を見開いた。
窓の外、夕焼けに染まる校庭。
その向こうへ消えていった🌸の姿を思い出し、彼はゆっくりと力強くシャーペンを握り直した。
「……ったく。お前らに言われなくても、合格したら速攻で捕まえるっつーの」
「へーへー、頑張れよ、未来の旦那さん」
からかうような夜久たちの声に、黒尾の頬が少しだけ熱くなる。
合格通知という名の「通行許可証」を手に入れたら、真っ先に彼女のファインダーに、自分だけを映させよう。
黒尾鉄朗の、新たな「戦略」が決まった瞬間だった。
センター試験という大きな山場を越え、黒尾の日常はいよいよ「追い込み」の極致に達していた。
図書室にこもる時間が増え、周囲の空気もピリピリとし始める。
そんな状況でも、🌸だけは相変わらずのペースを崩さない。
放課後のチャイムが鳴ると同時、彼女は手早く荷物をまとめ、どこか浮き足立った様子で教室を後にする。
「……なあ、研磨」
「……何、クロ」
図書室へ向かう廊下。
黒尾は今日も、校門へと小走りで向かう🌸の後ろ姿を窓越しに眺めながら、隣の研磨に声をかけた。
「あいつ、最近……いや、前からあんなに帰るの早かったっけ? それに、なんか毎日楽しそうじゃね?」
「……さあ。クロが部活しかしてなかったから、気づかなかっただけじゃない」
「バイトも週数回だろ? なのに毎日あのスピード。……これ、もしかして俺の知らないところで、何か別の『被写体』でも見つけてんじゃねーだろうな」
黒尾の言葉には、隠しきれない焦燥感が混じっていた。
研磨はゲーム機から目を離さず、淡々とした口調で返す。