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*夢物語* 【夢小説短編集】

第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】


数年後、有明アリーナ。
かつての少女は今、プロのフォトグラファーとしてコートサイドに立っていた。

Vリーグ、日本最高峰の戦い。
ファインダーの向こう側には、あの頃よりも一回りも二回りも逞しくなった「彼ら」の姿がある。


「おーい、🌸! こっち、一番いい顔で頼むわ!」


セット間のウォームアップ中、鋭い声をかけてきたのは、日本バレーボール協会で働く黒尾だった。
スーツ姿でも隠しきれない独特の雰囲気は相変わらずだが、その視線はどこか誇らしげに彼女を見つめている。

「クロ、仕事中でしょ。……でも、協会用の公式写真、最高に格好いいやつ撮るから」

「ハハッ、言ったな? 専属カメラマンの腕、信じてるぜ」


黒尾がニヤリと笑って去っていくのと入れ替わりで、一人の選手がこちらに駆け寄ってきた。


「🌸さん! 今日もよろしくお願いします!!」


太陽のような笑顔を向けてきたのは、ブラジルでの修行を経て帰国した日向だ。
あの春高の日、熱に浮かされながら写真を見ていた少年は、いまや世界の空を舞う「最強の囮」となっていた。


「日向くん、今日も高く飛ぶ準備はできてる?」

「もちろんです! あの時より、もっと、もっと凄い『翼』、撮ってくださいね!」

「……翔陽、うるさい。集中して」

後ろから現れた研磨が、あきれたように日向の背中を押す。
彼は今やスポンサーとして、この試合を支える側にいた。

「🌸、……これ」

研磨が差し出したスマホには春高の日に彼女が撮った、日向の「翼」の写真が設定されていた。


「これを超えるやつ、今日撮れる? 期待してるよ」

「……ハードル高いなあ。でも、今の彼らなら、もっと凄いの見せてくれるでしょ?」


試合開始のホイッスルが鳴り響く。
🌸は深く息を吐き、カメラを構えた。

(……見せて。今の、あなたたちの「全力」を)

レンズ越しに、日向が床を蹴る。
かつて鳥籠を壊して飛び立った少年たちは、今、自由な空を縦横無尽に駆け巡っている。

シャッターを切るたびに、あの日潔子と交わした約束が胸に蘇る。
「晴れやかな顔の彼ら」は今、目の前で誰よりも輝いていた。
指先に伝わる確かな鼓動。
奇跡の「一秒前」を追い続ける彼女のシャッター音は、熱狂するアリーナの歓声に溶け込み、未来へと響いていった。


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