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*夢物語* 【夢小説短編集】

第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】


連絡先を交換し、データの転送が終わるのを待つ間、二人の間に温かな沈黙が流れた。


「試合、お疲れさまでした。……本当に、皆さんのバレー、よかったです……とても感動しました」


最後にそう短く告げて、🌸は背を向けた。
背後で深々と頭を下げる清水の気配を感じながら、彼女はカメラバッグをぎゅっと抱きしめた。



春高3日目の夜。
部屋で一人、カメラのデータをPCに移していた。
画面に映し出されるのは、濃密な記憶だ。
空中を統べるような小さな背中。
歯を食いしばり、床に倒れ込む直前の執念。
そして、試合が終わった瞬間の、あの空虚なまでの静寂。


(……もっと、何かできたのかな)

レンズ越しに異変に気づきながら、何もできなかった自分。
切なさが胸の奥に澱のように溜まっていく。
その時、机の上のスマホが短く震えた。
画面を見ると、そこには先ほど連絡先を交換したばかりの清水潔子の名前があった。


『写真、本当にありがとう。
さっき、みんなで一緒に見たの。日向も、熱でうなされながら「俺、かっこいい……!」って泣きそうな顔で笑ってた。
負けた悔しさは消えないけれど、あの写真のおかげで、自分たちがここで戦った証をもらえた気がするって、みんな言ってる』


画面を見つめる🌸の視界が、じわりと滲んだ。


「……よかった。本当に、撮っていてよかった……」


震える指で返信を打つ。


『そう言ってもらえて、救われる思いです。皆さんのバレーを撮るのが、私の誇りでした。またいつか、コートに立つ皆さんの姿を撮らせてください』


すると、すぐに既読がついた。


『ええ、ぜひ。今度はもっと、晴れやかな顔の彼らを撮ってあげて。……あと、これからは「清水さん」じゃなくて「潔子」でいいわ。私も、あなたの撮る写真のファンになっちゃったから』


予期せぬ言葉に、🌸は思わず声を上げて笑ってしまった。


「……潔子ちゃんか。なんだか、すごい友達ができちゃったな」


切なさが消えたわけではない。
けれど、写真が繋いでくれた縁が、冷えた心をじんわりと温めてくれた。

カメラを手に取り、レンズの埃を丁寧に拭き取る。
明日もまた、誰かの一生に一度の瞬間を切り取るために。
🌸とカメラの旅は、ここからまた新しく始まっていくのだった。


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