第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「見て、見て見て影山!! これ、今の試合の俺!!」
日向がスマホの画面を突きつけると、影山はあからさまに嫌そうな顔をして首を後ろに引いた。
「んだよ、近すぎんだろボケッ……あ?」
画面に映っていたのは、ネット際で最高到達点に達した日向の姿だった。
背後のライトを背負い、広げた両腕がまるで巨大な翼のように見える。
一瞬の静寂と、爆発的な躍動感が一枚に凝縮されていた。
「……何だこれ。お前じゃねえみたいだな」
「だろ!? 研磨の幼馴染の人が撮ってくれたんだって! 『空飛んでるみたいで感動した』って!」
日向が鼻の穴を膨らませて自慢げに胸を張る。
その騒ぎを聞きつけて、田中と西谷が飛びついてきた。
「おい日向! 見せろ、俺らにも見せろ!」
「…うおおお!! 何だこれ、めちゃくちゃカッケーじゃねえか!!」
田中がスマホを奪い取るようにして凝視し、西谷もその横から身を乗り出す。
「この構図、このシャッターチャンス……! 日向のくせに、主役感がハンパねえぞ!」
「……いいな、日向。俺のあの超絶ラインショットは? 撮ってねえのか、その人は!」
「えっ、あ、それは……わかんないです。研磨が送ってくれたのはこれだけで」
田中がぐぬぬと唸り、隣で月島が「……ふーん」と冷ややかな、けれどどこか羨望の混じった視線を送る。
「ずいぶんと『特別扱い』だね。そんなに綺麗に撮ってもらえるなんて、良かったじゃない。……僕のはどうせ、嫌な顔してブロックしてる瞬間だろうけど」
「ツッキー、それは自意識過剰だよ!」
「うるさい、山口」
山口がフォローを入れる中、菅原が「どれどれ」と輪に加わった。
「わあ、本当に綺麗だね……。愛を感じる写真っていうかさ。日向、これ撮った人にちゃんとお礼言ったの?」
「まだです! 今から行ってきます! !」
「あ、おい待て日向!」という澤村の制止も聞かず、日向は脱兎のごとく駆け出していった。
その背中を見送りながら、田中がポツリとこぼした。
「……いいなあ。俺もあんな風に、翼が生えてるみたいに撮られたいぜ」
「龍、俺たちの修行が足りねえんだよ。もっと『撮りたくなる男』にならねえとな!」
西谷が力強く拳を握りしめ、烏野のメンバーたちの間には、勝利の喜びとはまた別の、奇妙な対抗心が芽生えていた。
