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*夢物語* 【夢小説短編集】

第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】


ファインダー越しに見た光景は、勝利の咆哮と、敗北の静寂が入り混じった残酷なほどに美しい世界だった。


試合が終わり、両校の選手たちがネット際で握手を交わす。
あんなに激しくぶつかり合っていた選手たちも、今はただ互いの健闘を称え合う一人の高校生に戻っていた。
🌸はカメラを構え続けた。
彼らがコートを去るその最後の一歩まで、レンズから目を離すことはできなかった。
一人一人の背中、拭いきれない汗、そして晴れやかさと悔しさが同居するその表情。
そのすべてを記録することが、特等席で見守っていた自分の使命であるかのように感じていた。

やがて、最後にコートを後にする背中を見送ったとき、張り詰めていた糸がふっと切れた。


「……すごかった」


レンズから目を離した瞬間、視界が急激に歪んだ。
堪えていた涙が、堰を切ったように溢れ出した。
白熱した試合の余韻と、彼らが積み重ねてきた時間の重み。

そして、あの「ゴミ捨て場の決戦」がついに終わってしまったという喪失感と感動が、一気に胸を突き上げてきた。
頬を伝う涙を拭うことも忘れ、🌸は胸元に抱えたカメラを強く握りしめた。

重たい機材の中に保存された数百枚の写真は、間違いなく、彼らが全力で生きた証だった。



「お疲れさま。……本当に、最高の試合だったよ」


引き上げてきた黒尾と研磨の前に立った🌸の声は、自分でも驚くほど震えていた。
鼻の頭を赤くし、潤んだ瞳で二人を見上げる彼女の姿に、黒尾が真っ先にニヤリと口角を上げた。


「おーおー、お嬢さん。主将の俺より泣いてんじゃねーの?」

「……うるさい。あんなの見せられたら、誰だって泣くよ」

「ふふ、ありがと。……応援、届いてたよ」


研磨がタオルの隙間から少しだけ目を細めて笑う。
幼馴染たちなりの、精一杯の感謝だった。


「ほら、これ。とりあえず何枚かスマホに送っとくね。……あ、これとか凄くない?」


🌸が画面を操作して共有した写真の束。
その中に、あの「翼」が見えた瞬間の一枚が混ざっていた。
それを見た研磨の手が止まる。


「……これ、翔陽に見せたら喜びそう。……本人に送ってもいい?」

「えっ、あ、うん。もちろん」


研磨の指先が動き、数分もしないうちに会場のどこかで一騒ぎ起きたのが分かった。



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