第3章 幼馴染は卒業します 【ハイキュー!! 孤爪研磨】
練習が終わり、すっかり日の落ちた帰り道。
研磨は相変わらず、前髪の隙間から不機嫌そうな視線を地面に落としたまま、無言で歩いていた。
「……研磨、まだ怒ってる?」
「……別に。……怒ってない」
「嘘だ。さっきから一言も喋ってくれないじゃん」
「………🌸は、みんなにクッキー配って満足したんでしょ。……それでいいじゃん」
吐き捨てられる冷たい言葉。
けれど、歩幅を🌸に合わせてゆっくり歩いてくれるところに、彼の優しさと執着が透けて見える。
街灯に照らされた研磨の家の前。
「じゃあ、……お疲れ様」
「あ、待って、研磨!」
背を向けようとした彼の袖を、🌸が慌てて掴む。
研磨が不思議そうに振り返った瞬間、🌸はバッグの奥から、丁寧に、けれど少し豪華にラッピングされた小さな箱を取り出した。
「はい。……ハッピーバレンタイン」
「…………え」
研磨が呆然と固まる。
「開けてみて。……それ、研磨のためにだけ作ったんだから」
研磨は受け取ると、おぼつかない手つきでリボンを解き、箱の蓋を開けた。
そこには、体育館でみんなに配ったものとは違い、艶やかで、大きな――「ハート型」のチョコレートが入っていた。
「……っ」
あからさまなその形に、研磨の顔が一気に火照っていくのが、暗い夜道でもはっきりと分かった。
「……これ、どういう……意味」
「意味、わかるでしょ? ……体育館では、あんな風にしか渡せなくてごめんね。……ずっと、好きだったよ。研磨」
絞り出すような🌸の声が、静かな住宅街に響く。
すると、真っ赤な顔で固まっていた研磨が、視線を彷徨わせながらボソリと呟いた。
「……過去形?」
「え?」
「……今さっき、『好きだった』って言った。……もう、過去のことなの」
予想外の聞き返しに、🌸は目を丸くして、それから慌てて首を振った。
「違う! 違うよ、今も……今も、ずっと好き!」
その言葉を聞いた瞬間、研磨はフッと視線を落とし、手元にある大きなハートを壊さないようにそっと握りしめた。
反対の手で🌸の指先を絡める。