第3章 幼馴染は卒業します 【ハイキュー!! 孤爪研磨】
3年生が引退し、どこか広くなったように感じる体育館。
バレンタイン当日、🌸が差し入れの袋を抱えて現れると、新体制のバレー部員たちは色めき立った。
「みんな、お疲れ様! 休憩中に食べて。クッキー焼いてきたんだ」
「うおおおお!! 🌸さんマジ天使!!」
「俺、今日ゼロ確定だと思ってたんで泣きそうっす!!」
リエーフをはじめ、部員たちが群がってクッキーを頬張る。
🌸は、輪の外でドリンクを飲んでいた研磨にも、みんなと同じラッピングの袋を差し出した。
「はい、研磨。研磨の分」
「………サンキュ」
研磨は受け取った袋をじっと見つめた。
……みんなと同じ、赤いリボンの袋。
中身も、みんなが「うまい!」と騒いでいるのと同じ、プレーンとチョコチップのクッキー。
「…………」
研磨はそれを一口かじると、途端に表情をなくした。
いや、元から無表情に近いけれど、さらに心のシャッターが「ガシャン」と音を立てて閉まったような、そんな冷たい空気が彼から漏れ出す。
「研磨? お口に合わなかった?」
「……別に。……普通。……他のみんなと同じ味だね」
研磨の声は、いつも以上に低くて抑揚がない。
明らかに機嫌を損ねた様子で、研磨はクッキーの袋を雑にバッグに突っ込むと、さっさとゲーム機を取り出してしまった。
(……あ、相当怒ってる……)
🌸は内心で苦笑いした。
実は、研磨には別のを用意しているのだ。
サプライズのつもりだったが、研磨にとっては「自分だけ特別じゃない」という今の状況が、我慢ならないほど面白くないらしい。
「……研磨、あのね。後で……」
「……練習戻るから」
「研磨……」
トゲのある言葉を吐き捨てて、研磨は一度も🌸と目を合わせようとしない。
あからさまに「俺、今猛烈に機嫌悪いです」と背中で語る幼馴染。
そのあまりの分かりやすさに、様子を見に来てた黒尾が、横からニヤニヤしながら口を挟んだ。
「おーおー。研磨さん、絶賛おヘソ曲げ中だねぇ。自分だけ『特別』じゃなかったのがそんなにショックだったのかな?」
「……クロ、うるさい。……消えて」