第3章 幼馴染は卒業します 【ハイキュー!! 孤爪研磨】
「うおっ、マジか……! 手作りのお守りなんて、人生初だぜ!」
「これ、一針ずつ縫ったのか? 🌸、サンキュな……大事にするわ」
夜久や海が感慨深げに受け取る中、黒尾がひょいと自分の分を指先で掲げた。
「へぇ……。猫と背番号の刺繍入りか。凝ってるねぇ。……これ、俺と研磨のだけ特別仕様だったりしない?」
「ちょ、! 変なこと言わないで。みんな同じように気持ち込めたんだから」
「ははっ、照れんなよ。……でも、ありがとな。気合入るわ」
黒尾がニヤリと笑って🌸の頭を軽く小突く。
その光景を、少し離れたところでドリンクを飲んでいた研磨がじっと見ていた。
「……研磨、これ。研磨の分」
「…………」
研磨は無言でお守りを受け取ると、手のひらの中でじっとそれを見つめた。
丁寧な刺繍、少し不恰好だけど温かい糸の重なり。
「……これ、全員分作るの、大変だったでしょ。……何時間かかったの」
「えっ、あはは……。まあ、ちょっとだけ寝不足かな」
「……バカ。……睡眠時間、削ったでしょ」
研磨は少しだけ不機嫌そうに、けれどお守りを握りしめる指には力がこもっていた。
「……研磨、嫌だった?」
「……別に。……でも、これがあるから勝てる、なんて思わないよ」
「うん、わかってる。……お守りは、ただの願掛けだもんね」
🌸が少し寂しそうに笑おうとした瞬間、研磨がそのお守りを自分のスポーツバッグの、一番目立つジッパーに付け始めた。
「……でも。……せっかく作ってくれたんだから、オレンジコートに最後まで、持っていく」
「……! うん!」
そのやり取りを、プロテインをシェイクしながら眺めていた黒尾が、「ごちそうさまです」と小声で呟く。
(……ま、お守りっていうか、もはや研磨にとっては『勝利への執着』そのものになっちゃってるけどな)
「あ! 孤爪さん、自分だけ先に付けてる! 俺が一番に付けるって決めてたのに!」
「リエーフ、うるさい。……不器用なやつがやると紐が切れるから、夜久くんにやってもらえば」
「ひどいっす!!」
体育館に笑い声が広がる。
胸元に揺れる赤いお守りは、音駒の「繋ぐ」バレーに、もう一つの強い絆を添えていた。