第3章 幼馴染は卒業します 【ハイキュー!! 孤爪研磨】
帰りのバス、研磨は周囲の視線を無言の圧力で撥ね退け、当然のように🌸を隣の席に座らせた。
「……疲れたから、寝る」
それだけ言うと、研磨は🌸の肩にこてんと頭を預け、数分もしないうちに規則正しい寝息を立て始めた。
「ちょ、研磨……っ」
あまりの密着ぶりに🌸が固まっていると、後ろの席からニヤニヤと意地の悪い顔が覗き込む。
「おーおー。研磨さん、合宿中あんなに省エネだったのに、独占欲だけはフルパワーだねぇ」
「クロ、声大きい……! 研磨、起きちゃうから」
「いいんじゃねーの? こいつ、確信犯だろ」
黒尾がからかえば、通路を挟んだ席からリエーフも身を乗り出してきた。
「🌸さん! 孤爪さん、俺にはあんなに厳しかったのにずるいっす! 俺もそこ座りたい!」
「リエーフ、お前は黙ってろ。……でも🌸、今の研磨、相当幸せそうなツラしてるぞ?」
夜久にまで言われ、🌸は顔から火が出そうなほど赤くなる。
「みんな、静かにしてよ……。……ただの幼馴染だから、これくらい普通だし」
必死に弁明しながらも、肩にかかる研磨の重みと、微かに香るシャンプーの匂い。
(……本当は、私の方が心臓うるさくて、倒れそうなんだけど)
そう思いながら、🌸は居たたまれない幸せを噛みしめるように、そっと目を閉じた。
それを見ていた黒尾が、スマホのシャッター音を消して一枚撮ったことに、彼女はまだ気づいていない。
あれからも時間があると手伝いにくる🌸。
春高本戦への切符を手に入れたあの日から、音駒高校バレー部の空気は一層引き締まったものになっていた。
「……お、来たな」
黒尾がタオルの隙間から目を細めると、体育館の重い扉を開けて、🌸が少し大きな紙袋を抱えて入ってきた。
「みんな、お疲れ様!……これ、間に合ったから持ってきたよ」
「🌸さん! 何すか、また美味いお菓子っすか!?」
リエーフが期待に目を輝かせて駆け寄るが、🌸が袋から取り出したのは、赤い布に背番号の刺繍が施された小さなお守りだった。
「これ、みんなの分。……お菓子もいいかなって思ったんだけど、本戦は怪我なく、最後まで戦い抜いてほしくて。……夜なべして作ったんだ」