第1章 君を追いかける 相手 :相澤消太
その言葉を信じていないわけじゃないけれど、彼が言う「すぐ」が数時間後なのか、日付が変わる頃なのか、それは彼自身にさえ分からないはずだ。
「……結局、また待つだけなんだ」
俯いた🌸の影が、公園の砂場に長く伸びる。
心に重い影が落ちていた。
「——あれれ? そんなところで膝抱えて、迷子か何かか〜い?」
頭上から降ってきたのは、驚くほど場違いに明るい、聞き馴染みのあるハイトーンボイス。
顔を上げると、そこには私服姿に派手なサングラスをかけた男——プレゼント・マイクこと、山田ひざしが立っていた。
「マイク……さん」
「正解! って、おいおい……🌸ちゃん、泣いてんのか!? 消太の野郎、何したんだ!?」
マイクは慌てて腰をかがめ、🌸の顔を覗き込んだ。
いつも通りのハイテンションだが、その瞳には本気の心配が滲んでいる。
🌸は迷った末に、今日が一年記念の旅行の日だったこと、それなのに彼に急な仕事が入ってしまったこと、そして、ついカッとなって家を飛び出してしまったことを、途切れ途切れに話した。
「……私、わがままですよね。彼がヒーローだってこと、分かってるはずなのに」
「わがままなもんか! 今日はアニバーサリーだろ? 消太も消太だ、もっと上手い言い方があるだろうに……あの合理的カタブツめ……」
マイクは大きな溜息をつくと、ポンと🌸の肩を叩いた。
「よし! 決まりだ。🌸ちゃん、このままここで砂場の砂を数えてるなんて不健全だぜ。俺がパーッと連れ出してやる!」
「えっ、でも、消太くんがここで待ってろって……」
「あんな野郎の言うことなんて無視無視! せっかくの連休なんだ、楽しまなきゃ損だろ? 旨いもん食って、買い物して、消太が泣いて謝ってくるまで帰らねーぞ!」
マイクは強引に🌸の腕を引いて立ち上がらせると、彼が近くに停めていた車の方へ歩き出した。
「消太には俺から連絡しといてやるよ。『🌸ちゃんは俺がもらった!』ってな!」
「ちょっと、マイクさん! 変な火種を撒かないでください!」
焦る🌸を余所に、マイクはニカッと眩しい笑顔を見せる。
相澤からの「大人しく待ってろ」という言葉を破るのは怖かったけれど、今は誰かにこの沈んだ気持ちを連れ出してほしかった。