第3章 幼馴染は卒業します 【ハイキュー!! 孤爪研磨】
黒尾は強引に🌸を前方の席へと連れて行ってしまった。
それを見ていた研磨の瞳が、さらに暗く沈む。
(……クロ、絶対わざとだ……)
隣に座って、「楽しみだね」って言い合えると思ってた。
🌸が悲しそうな顔をしたのは分かっている。
謝らなきゃいけないのも分かっている。
けれど、自分に何も相談せず、黒尾とこそこそ準備を進めていた彼女への嫉妬と、それを面白がっている黒尾への怒りで、言葉が喉の奥でつかえて出てこない。
「……あーあ。研磨、窓の外見ちゃって。ありゃ相当キテるねぇ」
「……黒尾さん、からかうのはその辺にしてください。🌸さんが可哀想です」
周りが呆れたようにそう呟くが、黒尾は「これが『刺激』ってやつだよ」と、楽しそうに🌸へ資料を差し出した。
バスが走り出す。
一番後ろでイヤホンを耳に押し込んだ研磨は、音楽も流さず、遠ざかっていく🌸の後頭部を、ただじっと睨み続けていた。
合宿所に到着した途端、真夏の熱気と、それ以上に熱い強豪校たちの活気が押し寄せてきた。
バスを降りた🌸は、見渡す限りの見知らぬジャージ姿と体格のいい選手たちに圧倒され、思わず気後れして立ち止まる。
「……すごい、人……」
「おっと、迷子になんなよ?」
そんな彼女の心細さを察したように、黒尾がひょいと隣に立ち、当然のような顔でその肩を抱き寄せた。
「黒尾! 遅いぞお前!」
「よぉ、木兎。相変わらず元気だねぇ」
真っ先に飛んできた梟谷の木兎や赤葦、そして他校の面々に、黒尾は余裕の笑みで🌸を紹介し始める。
「紹介するわ。今回、うちの助っ人マネとして連れてきた🌸。俺と研磨の幼馴染でさ、超気が利くんだわ」
「えっ、音駒の新しいマネージャー!? しかもめちゃくちゃ可愛いじゃねーか! 黒尾、お前職権濫用だろ!」
「ぎゃーぎゃー騒ぐなよ。……ほら🌸、こっちのうるさいのが梟谷の主将さん」
「は、初めまして。……クロ、ちょっと、距離……近いから」
距離の近すぎる黒尾から離れようとする🌸だが、彼ははわざと腕の力を緩めず、ニヤニヤ笑っていた。