第3章 幼馴染は卒業します 【ハイキュー!! 孤爪研磨】
リエーフが真っ先に気づいて大きくを振る。
そこには、家庭科部の活動を終えたばかりの🌸が、紙袋を抱えて立っていた。
「みんな、お疲れ様。これ、部活で焼いたクッキーなんだけど……。もし良かったら、みんなで食べて?」
「うおっ、マジ!? 🌸さんの手作り!?」
「やった! 腹減ってたんだよなー!」
一気に群がる部員たち。
本当は、一番に研磨に食べてほしいけれど、面と向かって「君のために焼いたよ」なんて言う勇気はなくて、結局こうして「部活への差し入れ」という形に逃げてしまう。
「おっ、どれどれ……。おー、サクサクじゃん! さすが🌸、いつでも嫁に行けるなこりゃ」
黒尾が早速一枚つまんで、わざとらしく研磨の目の前で咀嚼する。
「うめーっ! 🌸さん、これ店出せますよ! 俺、あと五枚食っていいっすか!?」
「リエーフ、食いすぎ! ……あ、本当だ、これ美味いな」
「喜んでもらえて良かった、……みんな食べてくれてありがとう」
みんなに褒められ、顔をほころばせる🌸。
肝心の研磨はといえば、輪から一歩引いたところで、ますます眉間のシワを深くしていた。
(……クロも、リエーフも、あんなにベタベタ触って……)
🌸が自分のためにゲームを練習してくれているのは知っている。
彼女が本来得意なのはこういう「女の子らしい」ことで、それを自分以外の男たちが手放しで賞賛しているのが、どうしようもなく面白くない。
「……研磨? 食べないの?」
心配そうに駆け寄ってきた🌸の手には、可愛くラッピングされた小さな袋が一つ。
「これ……研磨の分。一番形のいいやつ選んだから」
「……」
研磨は無言でそれを受け取ると、袋越しに伝わる微かな温もりに、少しだけ指先を震わせた。
「……美味しい?」
研磨はクッキーを一気にかじると、「……普通」と短く言い捨てて顔を背けた。
けれど、その耳たぶがほんのりと赤くなっているのを、🌸は見逃さなかった。
「研磨ー? 顔赤いぞー? 砂糖が出すぎちゃったかなぁ?」
遠くから黒尾の冷やかしが飛んできて、研磨は再び「……クロ、一回黙って」と、今日一番の低い声で言い放つのだった。