第10章 鬼狩りの受難 【REBORN 雲雀恭弥】
「ま、お前に拒否権はねーけどな。さっきの雲雀との一件で、並盛の治安を乱した罪は重い。うちで面倒を見てやる代わりに、ボンゴレのために働いてもらう。雲雀もファミリーの一員だからな、さっきの件は水に流すぜ」
「……う、うん。わかった。とりあえず、お世話になります……」
🌸は引きつった笑みを浮かべ、ぺこりと頭を下げた。
行く宛てもなければ、お金すら持っていない。
屋根がある場所で眠れるなら、今はマフィアでも何でも縋るしかなかった。
(……マフィア、か。でも、こんな可愛い赤ん坊がボやってるくらいだし……)
🌸は心のどこかで、これはリボーンのごっこ遊びの延長線上の何かだろうと楽観視していた。
平和な茶の間の風景と赤ん坊の言葉は、どうにも現実味が薄かったのだ。
(きっと、ちょっとした用心棒代わりをしてほしいってことだよね。鬼を斬ることに比べれば、きっと大したことはないはず……)
だが、彼女はまだ知らなかった。
この赤ん坊が放つ「殺気」が本物であること。
そして、この先に待ち受ける戦いが鬼との死闘に勝るとも劣らない、ぶつかり合いであることを。
「……ま、不死川さんに怒られない程度には、頑張ってみるかな」
自分に言い聞かせるように呟いた🌸。
その腰に差した、水と風の色が混じり合う日輪刀が、これからの波乱を予見するように、西日に照らされて怪しく煌めいた。
翌朝、🌸は並盛中学校の門をくぐっていた。
リボーンに「ツナの護衛を兼ねて学校に通え」と簡潔に命じられ、一夜明ければ制服から鞄、果ては「戸籍」までもが完璧に用意されていた。
(戸籍とか、役所の手続きとか……どうやったの!?)
驚愕する🌸を他所に、リボーンは不敵に笑うだけだった。
「今日から転入してきた◯さんだ。仲良くするように」
朝のホームルームで教壇に立った🌸は、昨日までの殺伐とした世界とは無縁の、眩しいほどの平穏に気圧されていた。
昨日の「トンファーの男」が着ていたのは黒い学ランだったが、一般生徒の制服だブレザーだった。
そのため、🌸は自分が昨日戦った相手がこの学校の生徒……しかも「風紀委員長」で頂点に君臨する男だとは、微塵も気づいていなかった。