第10章 鬼狩りの受難 【REBORN 雲雀恭弥】
あの夜を思い出す。
突然異世界に放り出され、わけも分からず鬼に襲われた。
死を覚悟した瞬間救いの手を差し伸べてくれたのは、静謐な水を纏った水柱・冨岡義勇だった。
行く宛てのない🌸は、彼に嫌がられても、無言で突き放されても、必死にその後を追いかけた。
「……邪魔だ」
「……来るな」
そう突き放されながらも、無理やり食らいついていくうちに、気づけば彼の下で一年の修行を積み、水の呼吸をその身に刻んでいた。
鬼殺隊士として戦場に出た後、死線の淵を彷徨っていた自分を拾い上げ、地獄のようなしごきで叩き直してくれたのが、風柱・不死川実弥だった。
二人の柱に、文字通り死ぬほど鍛え抜かれた結果が、この一振りに集約されている。
「……で、お前は何者で、何で急に屋上に現れたんだ??」
「……何が起きたのか、正直、自分でもよく分かってないんだよね…」
🌸は、遠い目をして呟いた。
大正の、あの血の匂いが混じった風を思い出す。
リボーンは帽子の庇を指先でなぞり、「ここで立ち話もなんだ。ついてこい」と短く言った。
連れて行かれたのは、ごく普通の民家――「沢田」と表札の出た家だった。
中では、おっとりとした母親の奈々が「あら、可愛いお客様ね」と温かく迎え入れてくれた。
不死川の屋敷や、冨岡との生活では考えられなかったような、柔らかな日常の温度。
その空気に毒気を抜かれたのか、居間に座らされた🌸は、自分でも驚くほど饒舌になっていた。
現代から大正へトリップしたこと。
絶望の中で冨岡に出会い、嫌がられても無理やり食らいついて「水の呼吸」を学んだこと。
死にかけたところを不死川に拾われ、地獄のような日々の中で「風の呼吸」を叩き込まれたこと。
そして、鬼を斬った瞬間に光に包まれ、この街の屋上で目覚めたこと。
「……信じられないよね。自分でも、夢なんじゃないかって思うし」
一通り話し終えると、🌸は湯呑みを見つめて小さく溜息をついた。
隣で聞いていた茶髪の少年――沢田綱吉は、顎が外れそうなほど口を開けて固まっている。
「た、大正!? 鬼退治!? ……リボーン、この子、ヤバい電波なんじゃ……」
「黙ってろ、ツナ。こいつの力は本物だ」
リボーンは不敵に微笑み、エスプレッソを一口啜った。