第10章 鬼狩りの受難 【REBORN 雲雀恭弥】
「あの雲雀から一本取って逃げ切るなんてな。お前、面白い力を持ってるじゃねーか。……その戦闘技術、どこで教わった?」
🌸は息を呑んだ。
屋上での戦いを、最初から見られていた。
戦いたくないと願いながらも、その身に染み付いた鬼狩りの力。
それが、この奇妙な赤ん坊を引き寄せてしまったことに、彼女はまだ気づいていなかった。
塀の上に鎮座する赤ん坊が、こともなげに語りかけてくる。
普通なら腰を抜かす場面だ。
だが、🌸は驚きで目を見開いたものの、数秒後にはすうっと息を整えていた。
大正時代に飛ばされ、人を喰う怪物と殺し合い、ついさっきは血鬼術の光に包まれてこの場所に辿り着いたのだ。
今更、喋る赤ん坊の一人や二人現れたところで、驚きの在庫はとうに底を突いている。
「……こんにちは。えっと、リボーン君、だったっけ」
「ほう、ずいぶん冷静だな。肝が据わってやがる」
リボーンは面白そうに口角を上げた。
その漆黒の瞳が、値踏みするように彼女を射抜く。
「お前、どこの中学だ? 制服にしちゃあ随分と古風な格好だが」
「……ちゅうがく?」
🌸は首を傾げた。
その問いかけに、違和感を覚える。
確かに自分は、鬼のいる世界に渡る前は女子中学生だった。
けれど、あちらの世界で過ごした年月を合わせれば、もう立派な大人……とまではいかずとも、中学生と呼ばれるような幼さではないはずだ。
「そんなに若く見える……?」
半信半疑のまま、路地裏に面した店舗の窓ガラスに目を向ける。
そこに映っていたのは見覚えのある、けれど今の自分よりずっと幼い「自分」の姿だった。
(……嘘!?若返ってる……?)
頬に触れる。
掌の感触も、心なしか瑞々しい。
そこに映るのは、中学生程度の少女だ。
ちょうど、鬼の蔓延る世界にトリップしたばかりの頃の姿だったーー。