第9章 王子と姫の愛の逃避行♡ 【ONE PIECE サンジ】
賑やかだった宴の余韻を残したまま、深い静寂がサニー号を包み込んでいた。
寝入ってしまった女性陣の肩には、いつの間に温かいブランケットがかけられている。
ふと目を覚ました🌸は、その温もりに包まれながらゆっくりと体を起こした。
(……みんな、よく眠ってる)
月明かりに照らされたみんなの寝顔を見て、彼女は小さく微笑んだ。
けれど、ふと辺りを見渡すと、一番近くにいたはずの料理人の姿がない。
🌸は音を立てないよう静かに立ち上がると、見張りのデッキへと続く階段を上った。
「……眠れないのかい? 🌸ちゃん」
聞き慣れた、少し低くて優しい声。
振り返ると、手すりに背を預け、海を眺めていたサンジがいた。
指先に挟まれた煙草の火が、暗闇の中で小さな蛍のように赤く灯っている。
「あ……サンジ。起こしちゃった?」
「まさか。俺は見張りだからな。それに、レディの足音なら眠っていても聞き分けられるさ」
サンジはふっと紫煙を吐き出し、彼女が寒くないよう風上に立って風を遮った。
「……すごい」
思わず、感嘆の声が漏れた。
そこには、遮るものの何ひとつない、圧倒的な夜の世界が広がっていた。
見上げる空は、零れ落ちそうなほどの星々に埋め尽くされ、水平線の向こう側まで続く海は、鏡のようにその星屑を反射している。
「海と空しかない……。お城の窓から見ていた景色とは、全然違う」
「そうだな。ここはグランドライン。世界で一番わがままで、一番自由な海だ」
「私ね、今日のこと……一生忘れない。あなたが私を見つけてくれて、連れ出してくれたこと」
星空を見つめる🌸の横顔は、昨日の逃走劇の時よりもずっと穏やかで、そしてどこか大人びて見えた。
サンジは煙草を消すと、優しく、けれど真っ直ぐに彼女を見つめた。
「……俺はただ、君が笑ってくれる未来が見たかっただけさ。それこそが、料理人の……いや、騎士の本懐だからな」
二人の間に、穏やかな沈黙が流れる。
遠くで波が船体を叩く音だけが、心地よいリズムを刻んでいた。
🌸は、隣にいる金髪の騎士にそっと肩を寄せた。
サンジは一瞬、心臓が飛び出しそうに跳ね上がったが、今はただ、この静かな時間を壊さないよう、鋼の自制心でその温もりを受け止めていた。