第9章 王子と姫の愛の逃避行♡ 【ONE PIECE サンジ】
残っていた僅かな兵士たちは、その言葉を信じ込み、サンジたちが向かった地下通路とは真逆の方向へと一斉に駆け出していった。
その喧騒を、柱の影から見届けていた一人の「侍女」の変装を解いたナミが手で合図を送る。
「……作戦通りね。お姉様方、サンキュー! あとはこっちで引き受けるわ!」
ナミは混乱に乗じて城の裏口から鮮やかに脱出し、最短ルートを駆け抜け、仲間の待つサニー号へとひた走る。
「さあて、あとはあのバカコックが、ちゃんとお姫様を連れてこれるかどうかね!」
ひんやりとした湿り気を帯びた地下通路を駆け抜け、重い石扉を押し開けると、そこには陽光が枝葉の間から降り注ぐ深い森が広がっていた。
サンジは🌸を軽々と横抱きにしたままひた走る。
背後からは追手の足音ひとつ聞こえてこない。
あまりの鮮やかな手際に、🌸はまるで白昼夢を見ているような心地だった。
(……本当にお姉様たちが、あんなに協力してくれるなんて)
身内の結束と、ナミたちの完璧な工作。
すべてが噛み合った結果の「呆気なさ」に驚きつつも、🌸の意識はやがて、自分を抱きかかえる男の体温へと向かっていった。
ふと見上げれば、木漏れ日を浴びてサンジの金髪が細かく煌めいている。
整った横顔、真剣な眼差し、そして自分を片時も離さない強靭な腕。
街で会った時のどこか浮ついた雰囲気とは違う、凛とした気品が今の彼には宿っていた。
(……まるでお伽話の、王子様みたい)
胸の鼓動が早くなるのを感じ、🌸はじっとその横顔を見つめていると、視線に気づいたサンジが、走る速度を落とさずに視線だけを落とした。
「……どうした? 🌸ちゃん。どこか痛むのか、それとも苦しいか?」
「えっ……! あ、ううん! なんでもないの。ちょっと……眩しかっただけだから」
🌸は慌てて顔を赤くし、彼の胸元に視線を伏せて誤魔化す。ドレスの白い布越しに伝わるサンジの心音に、さらに顔が熱くなるのを感じていた。
一方、サンジは「鋼の精神」を必死に維持し、冷静沈着な騎士を演じ続けていたが、その内面は、もはや決壊寸前のダムのような状態だった。