第9章 王子と姫の愛の逃避行♡ 【ONE PIECE サンジ】
サニー号のキッチンには、いつもの活気は微塵もなかった。
サンジは火のついていない煙草をくわえたまま、拳が白くなるほど握りしめている。
「クソ……! レディにあんな顔をさせて……何が騎士道だ、俺は!」
「サンジ君、あんただけのせいじゃないわ。……でも、あんな風にサヨナラなんて、後味悪すぎるわよね」
ナミが悔しそうに唇を噛み、ウソップも力なくうなだれていた。
その時、船の外から控えめながらも芯のある声が響いた。
「――そこの自由な海賊さんたち、少しお話してもいいかしら?」
一同が警戒して甲板へ飛び出すと、そこには見事なドレスを纏った一人の女性が立っていた。
その顔立ちは、どこか🌸によく似ている。
「お前……城の追手か!?」
ウソップが構えるが、女性は静かに首を振った。
「私は🌸のすぐ上の姉よ」
サンジがハッとして前に出る。
「……🌸ちゃんのお姉さん…」
「ふふ、本当に素敵な方々ね。あの子、部屋であなたたちのことばかり話しているわ。……単刀直入に言うわね。私たち姉妹は、あの子をあんなエロ親父のところへ行かせたくないの。だから、式典の当日に脱走の協力をしてほしい」
「脱走の協力って!?」
ナミが驚いて身を乗り出した。
「ええ。お父様や大国の王には内緒でね。式典の最中、警備が最も薄れる瞬間があるわ。その時にあの子を連れ出して。……海賊なら、お姫様を掠うくらい、なんて事ないでしょう?」
「……お姉さんは、どうしてそこまでしてくれるんだ?」
サンジの問いに彼女は少しだけ悲しげに、でも力強く微笑んだ。
「あの子には、自分の足で歩く未来をプレゼントしたいの。それが、あの子が選んだ成人の誕生日の願いなら……最後に姉として叶えてあげたいじゃない」
サンジは深く、深く頭を下げた。
「……感謝するぜ、お義姉さん。……いや、お姉様!」
「あら、気が早いわね」
彼女は茶目っ気たっぷりに笑うと、懐から城の図面を取り出し、テーブルに広げた。
「いい? 作戦を伝えるわ。あなたは――」
絶望的だった空気が、一気に熱を帯び始める。
サンジの瞳には、愛するレディを救い出すための、蒼い炎が灯っていた。