第8章 一日遅れのショコラと、プロポーズ【 REBORN ディーノ】
「例えば、手作りのお菓子とか!彼の事を思って準備する時間が彼にとっては一番のプレゼントなんじゃないの?」
「……彼のことを考えて、準備した時間……」
「そうそう。その人、🌸が遠慮して申し訳なさそうな顔をするより、プレゼントを渡して真っ赤になってる顔の方が、何倍も嬉しいはずだよ」
友人たちの言葉に、🌸はハッとした。
ディーノが自分に求めているのは、形式的な返済ではない。
あの雨の日に差し出したタオルや傘のような、見返りを求めない「真心」だったのではないか。
「そうそう!……もうすぐバレンタインだし、ちょうどいいじゃない!」
友人の一人が、ポンと手を叩いて声を弾ませた。
その言葉に、🌸は思わず心臓を跳ねさせる。
「バレンタイン……。でも、そういうのって、もっと特別な相手に贈るものじゃない?」
「えっ、まだそんなこと言ってるの? あんなにマメに日本とイタリアを往復して時間作ってくれてるのに?」
友人は呆れたように肩をすくめ、🌸の顔を覗き込んだ。
「いい? 相手は百戦錬磨な感じの大人の男の人だけど、案外、手作りのチョコとか真っ直ぐなプレゼントに弱いものだよ。お返しなんて気にせず、『大好きです』って気持ちをぶつけちゃいなさいよ」
「だ、大好きだなんて……私はただ、恩を返さなきゃっていうのがあって……」
言い訳するように口ごもる🌸に、もう一人の友人が追い打ちをかけるようにニヤリと笑った。
「じゃあ聞くけどさ。もし、ディーノさんだっけ? 彼が他の女の子と同じようにデートして、同じように優しくしてあげてたら……どう思う?」
その瞬間、🌸の胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるように痛んだ。
自分以外の誰かに、あの太陽のような笑顔を向けるディーノ。
誰か別の女の子の心配をして、自分以外の誰かのために動く彼。
「……それは、嫌。……すごく、嫌かも」
呟いた言葉は、自分でも驚くほど本音だった。
「ほら、答え出てるじゃない。恩がどうとか、お返しがどうとか……そんなの、彼に会いたい理由の『建前』にしてるだけでしょ?」