第2章 トリュフと秘密の寄り道 【ハイキュー!! 北信介】
侑が縋り付くような目で🌸を見つめる。
治も負けじと、最後の一枚を大事そうに掲げた。
「いや、俺の方が『食いしん坊やから多めに入れといたろ』っていう優しさを感じる。胃袋を掴みにきとるんや。絶対俺や」
「「いや、俺や!!」」
「ちょっと二人とも、落ち着きぃな。全部同じ生地やし、形が違うのは天板に乗せる時に適当になっちゃっただけやって。たまたま端っこで膨らんだだけやし、治くんのは……うん、確かにちょっと多めに入れたかも?」
「「……!!」」
「ほら見ろ! サムは食いしん坊だから仕方なく多めやて! 敗北を認めろ!」
「うるさいわボケ、多めってことはそれだけ長く楽しめるっちゅーことや。俺の勝ちや」
二人が鼻を突き合わせて唸り合う中、角名が呆れたようにスマホでその様子を撮影している。
🌸は困ったように笑いながら、隣に立つ北を振り返った。
「……元気やね、相変わらず」
「せやな。……でも、侑。治。いつまで揉めとるんや。練習の時間、過ぎとるぞ」
北が静かに、けれど逃げ場のないトーンで告げた瞬間、双子の背筋が「ピンッ」と伸びた。
「「……!!」」
一瞬で解散してコートへ戻る二人。
練習に戻る双子の背中を見届け、🌸は残った部員たちにも「しっかりね」と声をかけて体育館を後にした。
夕暮れ時の冷たい風が、火照った体に心地いい。
隣を歩く北は、いつも通り静かに前を見据えている。
(……あんなに喜んでもらえて良かった)
夕闇が空を濃い群青色に染め、街灯がぽつりぽつりと灯り始める時間。
放課後の喧騒から切り離された公園は、驚くほど静かだった。
「……北くん、ちょっと寄り道せぇへん?」
歩みを止めた北は、少し意外そうに目を瞬かせたが、すぐに柔らかく頷いた。
「ああ、ええよ。急ぎの予定もないしな」
ベンチに並んで座ると、二人の距離はいつもよりずっと近く感じられた。
吐き出す息が白く混ざり合い、冬の寒さがかえって二人の体温を際立たせる。
北は、昼間の同級生や、先ほど体育館で後輩たちが大騒ぎしてクッキーを食べていた姿を思い返していた。
自分だけが「何ももらっていない」という事実に、胸の奥が少しだけ、冷たい風に吹かれたように疼いていた。
それを悟られまいと、彼はいつも通り凪いだ表情を保っている。
