第8章 一日遅れのショコラと、プロポーズ【 REBORN ディーノ】
案内されたボックス席に座ると、仕切りの向こうから嫌な声が聞こえてきた。
そこには派手なスーツを着た男に詰め寄られ、困惑したように俯く🌸がいた。
いつもの柔らかな雰囲気とは違う、背伸びをしたようなドレス姿が痛々しい。
「なあ、🌸ちゃん。ここでのバイト代なんてたかが知れてるだろ? もっといい店を紹介してやるよ。今の倍、いや三倍は稼げるぜ」
「……いえ、私はここで十分ですから。お酒、お作りしますね」
「つれないこと言うなよ。金、必要なんだろ? だったら手っ取り早く身体で稼いだほうが楽だって」
男の声には、隠そうともしない卑猥な響きが混じっていた。🌸の手がわずかに震えている。
「風俗もここも、似たようなもんだろ? 客に愛想振りまいて、金出せばどうせ股開くんだろ。……ほら、いい身体してんじゃねぇか」
「……っ、やめてください……!」
男が下卑た笑いを浮かべ、🌸の腰から太ももにかけて、いやらしく手を這わせた。
屈辱に顔を歪め今にも泣き出しそうな瞳で耐える彼女の姿に、ディーノの堪忍袋の緒が切れた。
ガタッ、と激しい音を立ててディーノが立ち上がる。
「……おい。その汚ねぇ手を、今すぐ彼女から離せ」
冷徹な、氷のような声が店内に響き渡った。
「あぁん? なんだてめぇ……。今、俺は楽しく飲んで——」
男が言い切るより先に、ディーノは迷いなく二人の間に割り入ると、男の手首を掴み、万力のような力で引き剥がし、怯える🌸を自分の背後へと隠した。
「っ!…ディーノ……さん……?」
「ごめんな、遅くなって」
背後の🌸にはいつもの優しく静かな声で囁いた。
ディーノは男を冷たく見下ろすと、その圧倒的な威圧感だけで相手を震え上がらせた。
「この子は俺の大事な恩人だ。お前のような下衆が気安く触れていい相手じゃない。……消えろ。二度と、その面を見せるな」
「ひ、ひぃっ……!」
男はディーノの瞳に宿る本物の「裏の社会」の気配に腰を抜かし、逃げるように店を飛び出していった。