第8章 一日遅れのショコラと、プロポーズ【 REBORN ディーノ】
「頼むよ。これ、君に受け取ってもらえなかったら、俺にとってはただのゴミになっちゃうんだ。イタリアの男に、プレゼントを突き返すなんて悲しいことさせないでくれよ」
「ゴミだなんて……そんな極端な」
🌸はディーノをみると思わず吹き出した。
大の大人が、捨てられた子犬のような目をして自分を見つめている。
「……分かりました。ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」
「よかった! やっと受け取ってもらえたな」
ディーノは心底嬉しそうに笑い、運ばれてきたカプチーノを口にした。
「あちっ、あつっ……! はは、ちょっと急ぎすぎたかな」
運ばれてきたばかりのカプチーノで彼は案の定、派手に舌を火傷し、慌てて水を飲もうと手を伸ばせば、今度は袖をテーブルの端に引っ掛け、ケーキのフォークをカランと落としてしまう。
「……ディーノさん、大丈夫ですか? はい、新しいフォークです」
「悪いな、🌸。どうも一人の時は、身体のキレが悪いっていうか……」
彼は口の周りに泡をつけたまま、照れくさそうに笑った。
その姿は隙だらけで年上なのにどこか放っておけない、子犬のような可愛らしさがあった。
そんな和やかな空気を切り裂くように、🌸のバッグの中で電子音が鳴り響いた。
スマートフォンのアラームだ。
「あ……ごめんなさい、ディーノさん。もう行かないと」
「えっ、もう? まだ話し足りないんだけどな……」
ディーノは目に見えて肩を落とし、名残り惜しそうに表情を曇らせた。
🌸は慌てて荷物をまとめると、申し訳なさそうに立ち上がった。
「これから、バイトがあるんです。今日は本当にありがとうございました。お礼までいただいちゃって」
「そっか、バイトか……。ちなみに、何のバイトをしてるんだ? 俺、近くなら送り届けるし、なんなら客として……」
食い気味に身を乗り出したディーノに、🌸は一瞬だけ言葉を詰まらせ、それから少し困ったような笑みを浮かべて首を振った。
「……秘密です。……そんなに面白いものじゃないですよ。じゃあ、失礼しますね」
「あ、おい、🌸!」