第8章 一日遅れのショコラと、プロポーズ【 REBORN ディーノ】
その後無事に部下たちと合流し、ようやく「跳ね馬」としての威厳を取り戻したディーノはその足で沢田家を訪れていた。
シャワーを借りツナの部屋に上がり込むなり、彼は手元にある淡い色のタオルと予備の傘を愛おしそうに見つめ、先程の出来事を話していた。
「……でさ、その子が本当に優しくて。泥だらけの俺の手を、嫌な顔一つせずに拭いてくれたんだ」
「はぁ……大変でしたね、ディーノさん。相変わらずというか……」
机に向かっていたツナは半ば呆れたような、それでいて同情の混じった溜息をついた。
当のディーノはといえば、上の空で自分の大きな手を見つめている。
「指先がさ、すごく柔らかくて。……参ったよ、あんなにふんわり笑う子が日本にいたなんてな」
「ほう。随分な熱の入れようだな、ディーノ」
不意に、窓際に座っていたリボーンが不敵な笑みを浮かべて口を挟んだ。
「その様子じゃ、完全に惚れたな?」
「なっ……!? ほ、惚れたとか、そんなんじゃないって!……いや、否定はしないけどさ」
図星を突かれたディーノは耳の先まで真っ赤にしながらも、否定しきれずに視線を泳がせた。
「でも、名前も聞けなかったんだろ? 連絡先とかは」
「それが……名乗る前にバスが来ちゃってさ。『返さなくていい』なんて言われちゃったし、お礼すらまともに言えてないんだ」
ディーノはがっくりと肩を落とし、手の中のタオルを握りしめた。
「どこの誰かも分からないんじゃ、探し出しようがないよな……。せめて、もう一度会ってお礼が言いたいんだけど」
「並木中の生徒なら、制服で分かるかもしれないけど……私服だったんですよね?」
「ああ。……ああ、もう! 俺のバカ! なんであの時、もっと早く名前を聞かなかったんだ!」
頭を抱えて悶えるディーノの横で、リボーンは楽しそうにレオンを転がしていた。
「ま、縁があればまた会えるんじゃねぇか? そのタオルと傘が、いい目印になるだろ」
「……そうだといいんだけどな」
ディーノは少しだけ希望を見出したように、窓の外の雨空を見上げた。
その手には、まだ彼女の温もりが残っているような気がしていたーー。