第8章 一日遅れのショコラと、プロポーズ【 REBORN ディーノ】
並木道に雨が降り注ぐ午後。
ツナに会うため来日し、部下と逸れてしまったディーノは案の定、部下たちがいないせいで盛大に足をもつれさせていた。
「おっとっと……わあッ?!」
派手な音を立てて水たまりに手をつき、お気に入りのジャケットも髪も台無しになり、「やっちまったな……」と苦笑いしながら立ち上がろうとした時、頭上の雨が止まった。
見上げると、そこには一本の傘を差し出し、心配そうにディーノを見つめる女性が立っていた。
「……大丈夫ですか? すごい音がしましたけど」
彼女はそっとしゃがむと、バッグから丁寧に畳まれた淡い色のタオルを取り出した。
「あ、ちょっとドジ踏んじゃって……」
照れくさそうに頭をかくディーノの濡れた頬や、泥のついた手を優しく拭いていく。
その手つきと表情の柔らかさに、ディーノは思わず見惚れてしまっていた。
さらに、彼女はバッグの中から予備の折りたたみ傘を取り出した。
「これ、よかったら使ってください。まだ少し濡れてますし……そのままじゃ冷えちゃいますから」
彼女は自分のタオルを彼の大きな手に握らせ、予備の傘もそっと持たせるとふんわりと微笑んだ。
「……ありがとう、助かったよ……俺はディーノ。君は……?」
「私は――。……あ、バスが来ちゃいました。タオルも傘も、返さなくて大丈夫ですから!」
去り際「風邪、引かないでくださいね」とだけ言い残し、彼女は雨の中に消えていった。
一人残されたディーノは、手の中のタオルと預かった傘を見つめ、柄にもなく顔を赤くしていた。
「……参ったな。日本には、あんなに優しい子がいるのか」