第2章 トリュフと秘密の寄り道 【ハイキュー!! 北信介】
「北くん……」
🌸が歩み寄ると、北は彼女の方を向き、ふっと小さく息を吐いた。
「🌸。……俺の3年間は、これでええんやろうか」
初めて、彼が漏らした弱音のような、確認のような言葉。
🌸は、迷わずに答えた。
「私は、世界で一番、あんたが正解やったって知っとる。負けたからって、それが消えるわけやない。……最高にかっこよかったよ、北くん」
北は一瞬、驚いたように目を見開いた。
そして、自分より少し背の低い彼女の頭に、そっと大きな掌を置いた。
「……おおきに。お前にそう言われるんが、一番効くな」
彼の瞳に、かすかな熱が宿る。
「結果」は敗北だったかもしれない。
けれど、彼が積み上げてきた「過程」は、1ミリも損なわれることなく、ここに刻まれていた。
メインアリーナの喧騒が、遠くの方で熱を帯びて響いている。
自分たちの試合が終わった後の、どこか現実味のない静寂。🌸と北は、観客席の隅で他校の激闘を静かに見つめていた。
「……終わっちゃったね、北くん」
ポツリとこぼした🌸の声が、冬の空気の中に溶けていく。
隣に座る北は、膝の上に置いた自分の拳を一度見つめ、それから前を向いた。
「せやな。……でも、不思議と嫌な感じはせえへんわ。やるべきことは、全部置いてきたつもりやから」
「そっか……。北くんらしいね」
🌸は、自分の指先をぎゅっと握りしめた。
スコアを書き続けた右手の疲れが、今になってじんわりと押し寄せてくる。
「マネージャーとして隣におれて、本当に良かった。……3年間、本当にお疲れ様、北くん」
「……それは、俺のセリフやで」
北が、ふっと柔らかく目を細めた。
「お前が毎日、選手以上に動いて、誰よりも俺らのこと見ててくれたから……俺は安心して『主将』でおれたんや。……おおきに、🌸。3年間、支えてくれて」
その真っ直ぐな言葉に、堪えていた涙がふわりと溢れた。
「……うん。……こちらこそ、ありがとう」
激闘の終わり。
けれど二人の表情には、一歩ずつ丁寧に歩んできた者だけが持てる、静かな誇りが宿っていた。