• テキストサイズ

*夢物語* 【夢小説短編集】

第2章 トリュフと秘密の寄り道 【ハイキュー!! 北信介】


北がコートに入ったことで、稲荷崎の空気は劇的に変わった。
浮足立っていた双子のプレーから「雑さ」が消え、組織としての強固な壁が復活する。

第2セットを危なげなく取り返し、勝負は運命のファイナルセットへともつれ込んだ。


「……あかん、心臓止まりそうや」

マネージャーの🌸は、スコアブックを真っ白になるほど握りしめていた。
第3セット、タイブレーク。
両校一歩も引かず、点差はつかず、取られたら取り返す泥沼の攻防。


「北くん、みんな……もう限界超えとる」


隣にいる北は、微動だにせずコートを見つめていた。

「……せやな。でも、あいつらは止まらんよ」


ラストプレー。
宮侑と治による、あの「双子速攻・裏」
決まれば勝利、あるいは同点への望み。
誰もが「決まった」と思ったその瞬間だった。


ーードゴォッ、!!


重い音が響く。
烏野の1年生コンビ——日向と影山のブロックが、双子の牙を叩き落とした。
スローモーションのように、ボールが稲荷崎側のコートに落ちる。


ーーピーッ、ピピーッ!!


試合終了を告げる長い笛の音。
最強の挑戦者、稲荷崎高校。
その春高は、初戦敗退で幕を閉じた。


静まり返る体育館の片隅。
整列を終え、引き上げてくる選手たちの肩は、一様に激しく上下していた。
呆然とする者、顔を覆う者。
怪物たちの宴が終わった後の、残酷な静寂。
🌸は、溢れ出す涙を何度も手の甲で拭った。
かける言葉が見つからない。
けれど、隣の北は、いつもと変わらぬ足取りで選手たちの方へ歩み寄った。

「……北くん」


🌸が震える声で呼ぶと、彼は一度だけ立ち止まり、静かに言った。


「泣くな、🌸。俺らの仕事は、まだ終わっとらんよ」


そう言って、彼は崩れ落ちそうになっている後輩たちの前へ立った。
悔しさに顔を歪める侑が、絞り出すように呟く。


「……北さん……すみ、ません……」


謝罪の言葉。
けれど、北はそれを遮るように、穏やかに、けれど凛とした声で返した。


「何を謝ることがあるん。……俺の仲間は、みんなすごいやろって。もっと、自慢したかったわ」


その言葉に、侑も治も、耐えていた決壊が崩れるように顔を歪めた。
北は一人一人の背中を叩くわけでも、熱く抱きしめるわけでもない。ただ、そこに立っていた。


/ 212ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp