第5章 その一瞬を切りとる君 【ハイキュー!! 宮侑】
「……自分、ほんまに来たん?」
夕暮れ時パークの入り口で、侑は待っていた。
ホワイトデー当日にたまたま部活が休みだと判明した瞬間、秒速で🌸を誘った。
断られる可能性も考えていたが、現れた彼女は驚くほど身軽な格好をしていた。
「誘われたからね。それに、今のシーズンは特に目当てのイベントないし、たまにはカメラなしで遊ぶのもええかなって」
「……カメラ、持ってへんのか?」
「うん。ロッカーにすら入れてへんよ、今日は完全手ぶら!」
🌸が笑って見せたカバンは、いつもの機材が詰まった重厚なリュックではなく、可愛らしいショルダーバッグだった。
「……しゃあないな。ほな、行くか。これ、使うてな」
侑がポケットから取り出したのは、自分名義の「年間パスポート」だった。
「えっ、侑くん!? 年パス買ったん!?」
「…一番安い方のやつやけどな。除外日とかよーわからんけど、これあったら、自分に『付き合え』って言われた時すぐ来れるやろ?」
驚きで目を丸くする🌸に、侑は少し顔を赤らめて、わざとらしく胸を張った。
「……感謝しろや。部活が休みの日は、たまーにやったら自分に付き合ってあげてもええよ?」
「何その上から目線! あはは、でも嬉しいわ。ほな、これから『年パス仲間』としてよろしくね、キャプテン」
「……おん。よろしく」
ゲートをくぐると、卒業シーズン真っ只中のパークは、学生たちの熱気で溢れかえっていた。
前回は「記録」に必死で、アトラクションなんて一つも乗れなかったけれど、今日は目の前に広がる景色を、ただ楽しむためだけにここにいる。
「よし、今日は『映え』とか『設定』とか禁止! 片っ端から乗りまくるで!」
「ええよ! ウチ、カメラ持ってないと足取りめっちゃ軽いからね!」
二人は真っ先に人気のアトラクションへと歩き出した。
猛スピードで駆け抜けるジェットコースターで、侑はコートで見せるのと同じくらいの、あるいはそれ以上の大声で叫んだ。
「――っはぁー! 心臓止まるかと思ったわ!」
「あはは! 侑くん、顔ひどかったよ! 写真撮りたかったー!」
「今は撮らんでええねん! ……自分、楽しいか?」