第5章 その一瞬を切りとる君 【ハイキュー!! 宮侑】
そして季節は巡り、2月のバレンタイン当日。
「お疲れさん! ほら、これ先週パーク行った時のお土産。昼休みにでもみんなで分けや!」
部室の前にひょっこり現れた🌸は、いつものように快活な声で、お馴染みのキャラクターが描かれた大きな缶を差し出した。
「……お土産? クッキー?」
受け取った侑はあからさまに肩を落とした。
期待していた「それ」ではない。
世の中が甘い香りに包まれるこの日に、渡されたのはあまりにも「いつも通り」なパークのクッキーだった。
「なんや、不満そうやな。そのクッキー、期間限定でめっちゃ美味しいんやで! みんなで食べたらすぐなくなるやろうし」
「いや、不満とかやなくて……。今日は、その、世間一般的に『特別な行事』の日やろ」
「特別な行事? ……あぁ、そうやった。今日新しいショーの先行告知が出る日やったね!」
「ちゃうわ! チョコや! チョコの話をしとんねん!」
侑の絶叫に、🌸は「あはは!」と明るく笑い飛ばした。
「侑くん、贅沢言いなや。さっき下駄箱の横通った時、あんたのファンが山ほどチョコ持って待機しとったん見えたよ。紙袋、もう溢れそうやん」
「そんなん関係あるか! 俺は、自分が……」
「はいはい、キャプテン。練習頑張りすぎで糖分足りてへんの? ほら、治くんたちに全部食べられんうちに、そのクッキーしっかりキープしときよ!」
嵐のように去っていく🌸。
残された侑は、手元のクッキー缶を恨めしそうに見つめていた。
「……ツム、がっかりすな。お前にはその、トラック一台分くらいの『貢ぎ物』があるやろ」
「サム……お前、今俺のクッキーに手ぇ伸ばそうとしたな」
「まぁ、あいつらしいよね。色気より食い気とオタ活」
角名がスマホをいじりながら、さりげなくその場を収める。