第5章 その一瞬を切りとる君 【ハイキュー!! 宮侑】
「……なんや、これ。めっちゃ派手やんけ」
侑は圧倒されていた。
不気味なはずのゾンビが、音楽に合わせて一糸乱れぬ動きを見せる。
それはもはやホラーではなく、一つの完成された「芸術」だった。
光と影、そして計算し尽くされた肉体の躍動。
「……すごっ…」
角名がポツリと呟き、治も食べかけのフードを止めて見入っている。
そして、ついにあの有名なイントロが流れ始めた。
テレビCMやSNSで嫌というほど耳にする、今年のメインテーマ曲。
客席のボルテージが一気に最高潮に達し、ゲストたちが一斉に踊り出す。
「……えっ、自分なんなん!?」
侑が隣を見ると、🌸はもうそこにはいなかった。
いや、体はそこにあるのだが、魂が完全に「向こう側」へ行っていた。
🌸は、サビの有名な振り付けどころか、間奏の細かいステップまで、何故かすべて完コピして踊り狂っていた。
「……自分、なんでそんなダンスパート以外も完璧なん!?」
「……毎日見てるからね…! はい、次右から!!」
「いや、俺に指示出すなや! 踊らんぞ、俺は!」
「ええから! 侑くんも体動かし! ここは恥捨てたもん勝ちやで!」
満面の笑みで、けれど目はガチの「表現者」として踊る彼女。
それを見ているうちに、侑の心にも妙な火が点いた。
「……くっそ、自分にそんな楽しそうに踊られたら、黙って見てられへんやんけ!」
「あ、ツムもやりだした。……ほんま、あいつら似た者同士やな」
治が呆れたように笑いながらも、自分も少しだけリズムに乗り始める。
ステージ上の芸術的なダンスと、隣で楽しそうに踊る🌸。
爆音の中で、侑は彼女の「好き」に対する真っ直ぐなエネルギーに、完膚なきまでに叩きのめされていた。
「……自分、最高におもろいわ!!」
曲が終わる頃、侑は肩で息をしながら、これまでにない爽快感を感じていた。
汗をかき、髪を乱しながら笑う🌸を見て、侑は確信した。
こいつをバレーコートに呼んで、この熱量で自分を撮らせたい。
そのためなら、どんなエグいスパイクだって打ってみせる!と。