第12章 別れてから
青峰side
別れてから、俺は何も変わらなかった。
練習には来ないまま。
学校でも、誰とも深く話さない。
ただ、時間だけが過ぎていった。
夜になると、無意識にスマホを手に取っていた。
もう連絡する理由なんてないのに、名前を探して、途中で画面を消す。
何度も、それを繰り返した。
邪魔だ、と言った。
どうでもいいだろ、と言った。
言葉にした瞬間の、雫の顔が頭から離れなかった。
泣かなかった。責めもしなかった。
ただ、何かを諦めたみたいな目をしていた。
あの目を見た瞬間、青峰は分かっていた。
――もう戻れない。
それでよかったはずだった。
近くにいたら、雫まで壊れると思っていた。
だから、一番嫌われる言い方を選んだ。
なのに。
一人になると、胸の奥が妙に静かだった。
苦しいとか、悲しいとか、そういう感情すらうまく出てこなかった。
ただ、ぽっかり空いた感じだけが残った。
バスケをしても、ボールを持った瞬間に思い出す。
「最近、私のことどう思ってる?」
あの声。
ドリブルの音に紛れて、
何度も耳に蘇る。
あの時、少しでも違う言葉を選んでいたら。
そう考えかけて、青峰は首を振った。
考えちゃいけない。
戻らないと決めたのは、自分だ。
嫌われる役を選んだのも、自分だ。
だから、後悔する資格なんてない。
それでも。
夜が深くなるほど、思ってしまう。
雫は今、ちゃんと眠れているだろうか。
ちゃんと、笑えているだろうか。
自分の言葉で、傷ついていないだろうか。
そんなことを考えるたび、胸の奥が、じわじわ痛んだ。
嫌われたかった。
でも、忘れられたいわけじゃなかった。
そのことに気づいた時、俺は顔を覆った。
誰もいない場所で、声も出さずに、ただ、息を吐いた。
守ったつもりで、全部壊した。
それでも、もう戻れない。