第13章 決意
帝光中学が壊れてから、学校はただの通過点みたいな場所になった。
同じクラスに、黒子テツヤがいた。
特別話すことはなかった。
お互い、必要以上に関わらないまま、時間だけが流れていた。
ある日の昼休み。
雫が席に戻ると、隣の机の上に資料が置かれていた。
高校のパンフレットだった。
たぶん、テツくんのものだ。
ページが少し開いたままで、バスケットボール部の特集が見えた。
雫は、無意識に視線を落とした。
そこに、見覚えのある名前があった。
誠凛高校。
胸の奥が、小さく揺れた。
思い出したのは、帝光の試合のあとに偶然立ち寄った高校の体育館。
全員一年生で、技術も完璧じゃないのに、必死に声を出して、転びながら走って、笑いながらバスケをしていたチーム。
勝つためじゃなく、誰かを置いていくためでもなく、「一緒にやる」ためのバスケ。
あの空気だけが、なぜかずっと心に残っていた。
雫は、もう一度パンフレットを見た。
帝光には戻れない。
あの場所は、もう終わってしまった。
でも、バスケそのものを嫌いになったわけじゃない。
ただ、ああいう場所でやりたかっただけだ。
雫は、そっと資料を閉じた。
誰に言うでもなく、心の中で決めた。
壊れた場所に戻るんじゃない。
違う場所で、新しく始める。
誠凛高校。
あの日、楽しそうにバスケをしていた場所。
雫は、そこに行く決意を固めた。