第10章 闇堕ち
それでも二人は離れなかった。
部活には行かないまま、放課後は一緒に過ごした。
だから雫は、まだ終わっていないと思っていた。
ある日、いつものように並んで歩きながら、雫がぽつりと聞いた。
「最近、私のことどう思ってる?」
大輝は、しばらく何も言わなかった。
それから、前を向いたまま、低く言った。
「俺のことなんて、お前はどうでもいいだろ」
雫は立ち止まった。
どうでもいい、そんなわけがない。
冗談だと思いたくて、でも冗談に聞こえなくて、雫はもう一度聞いた。
「……もう、私のこと好きじゃなくなったの?」
その言葉をきっかけに、大輝の態度が一変した。
「今のお前、邪魔なんだよ」
勢いだった。言い直す間もなく、その言葉は空気に落ちた。
雫は何も言えなかった。
邪魔、その一言で、それまで積み重ねてきた時間が一気に壊れた気がした。
大輝は、そのまま背を向けた。
引き止めもしなかった。
説明もしなかった。
ただ、離れていった。
それきり、二人は一緒に過ごさなくなった。
後から考えれば、あの言葉は本心ではなかったのかもしれない。
でも、そうだったとしても。
「どうでもいいだろ」も、「邪魔なんだよ」も、確かに言われた言葉だった。
そういうことが、あった。
理由も、正解も、その時は誰にも分からなかった。