第10章 闇堕ち
川沿いに出ると、大輝と監督が二人で立っていた。
声をかけようとした、その時。
監督が、とんでもないことを言った。
「お前が嫌なら、練習にはもう来なくてもいい。ただし試合には出るんだ。出て勝てば文句は言わん」
……何、それ。
頭に血が上る。
気づけば私は、監督の胸ぐらを両手で掴んでいた。
「何言ってんの……?大人のお前らが、そんなこと言うから――」
喉の奥が熱くなる。
「大輝は……大輝は!!」
「雫、もういい」
大輝が、低い声で言った。
「監督。分かりました」
その言葉だけ残して、監督は学校へ戻っていった。
大輝はその場に座り込み、膝に腕を乗せたまま、動かない。
「雫。やっぱ、俺に勝てるのは俺だけみたいだ」
そう言った背中は、泣いているみたいだった。
私は何も言えず、ただ抱きしめた。
この孤独は、私も知っている。だから何か言えると思った。
……でも、言葉が出ない。
あの時の私が、本当は何を言ってほしかったのか。
考えても、思い出せない。
結局私は、その背中を抱きしめることしかできなかった。