第10章 闇堕ち
背後から、足音。
「青峰くん。茶郷さん。練習に戻りましょう」
「……てつくん」
大輝が顔を上げる。
「なんでだよ。なんのために練習すんだよ?試合に出りゃ嫌でも勝っちまうのに。戦意も失せた相手を、これまで以上に叩き潰せるようになりゃいいのか?」
「気持ちは分かります。けど――」
「分かる?」
大輝の声が鋭くなる。
「一回こんな経験してる雫なら、まだしも。お前に何が分かるんだよ。教えてくれよ。お前みてーに、ひとりじゃ何もできねぇ奴に、何が分かんだよ!
「……大輝、それは言いすぎ……」
思わず口を挟むと、睨まれた。
「黙ってろ、雫。これはテツと俺の問題だ」
その言葉に、唇を噛むしかなかった。
テツくんは、視線を逸らさずに言う。
「僕だって、青峰くんやみんなを羨ましいと思う時はあります」
「でも、出来ないことを嘆いても仕方がない。だから僕は、全力でパスを回すために――」
「誰に回すんだよ、そのパスは」
大輝が遮る。
「あ……」
「お前のパスがなくても、俺は一人でどんな奴にも勝てちまうのに?……あん時から、お前のパスは貰ってねぇ。ついこの間なのに、もう随分昔のことみてーだ」
そして、決定的な一言。
「俺は……もう、お前のパスの取り方も忘れちまった」
大輝の目から、光が消えていた。
黙って見つめ合う二人。
私は、顔を背けることしかできなかった。
どっちが悪い、とかじゃない。
二人とも、真剣にバスケが好きなだけなのに。
なのに――
どうして。
どうして、こうなってしまうんだろう。