第9章 壊れていく心情
しばらく経って、全国中学バスケットボール大会の予選会場に来ていた。
コートに立っているのは、せいくん、しんくん、大輝、あっくん、りょうくん。
結果は――初戦突破。
……まあ、当たり前。
試合後、みんなでご飯を食べていると、さっちゃんが明るく声をかけてきた。
「予選、初戦突破おめでとう!」
「……ん」
「そうだな」
反応は、淡泊。
「あれ?なんかテンション低くない?」
「むしろ、なんでそんなお前がテンション高ぇのか聞きてぇよ」
「いつものことじゃん」
「うん。割と、当たり前になってる」
「黒子っちは、昨日からずっと幸せそうっスけど」
「テツは、公式戦に出るのが初めてだったからな」
「それで、あんなキラキラしてるのか」
みんなが笑っている中で、一人だけ浮いている人がいた。
――大輝。
「勝ったのは喜ばしいことだ」
征くんが、静かに場をまとめる。
「このまま油断せず行こう、と言って終わりにしたいところだが一つ、提案がある」
一瞬、空気が変わる。
「今のチームは強い。だがその反面、勝敗が決まったあとのモチベーション低下が目立つ」
「よって、ノルマを課したい。基本1試合1人20点だ」
「アハッ!いいじゃないっスか!楽しそーだし!」
りょうくんが笑って、大輝を見る。
「ねー、青峰っち?」
「…あー」
大輝は、面倒そうに頭をかいた。
「なんか、めんどくせぇな」
――え。
あの大輝が、「めんどくさい」?
「あれ?ノリ悪くないっスか?」
「青峰っち、こういうの、いっつも燃えるじゃないっスか」
「だってよー勝ってんなら、別にいいだろ」
その言葉に、胸がざわっとした。
「大輝、そんなこと……」
思わず口を出しかけると、せいくんが先に続けた。
「オレも、好んでノルマを課すわけではない。だが、はっきり言わせてもらう」
視線が、大輝に向く。
「モチベーションの低下が最も目立つのは、お前だ。スコアラーが、得点に執着しなくなれば、チームの士気にも関わる」
大輝は、一瞬だけ黙った。
「……はぁ。わーったよ。とにかく、点取ればいいんだろ」
その声には、いつもの熱がなかった。
私は、その横顔から目を逸らせなかった。
勝っているのに。
誰よりも強いのに。
――どうして、こんなにも冷めて見えるんだろう。