第9章 壊れていく心情
ある日の試合。
ありえない角度でゴールを決めた大輝。
「すげぇ!」
「なんであれが入るんだ?」
そう歓声を聞いて私は嫌な予感がしていた
その日の帰り道。
てつくんと大輝と、三人で並んで歩いていた。
「頑張れば頑張るほどさ」
大輝が、ぽつりと言う。
「バスケって、つまらなくなってくんだよ。結局、ただのゲームだろ。だからさ、これからは試合もテキトーに――」
「それは、ダメです」
ぴたりと、てつくんが止めた。
同時に、私は大輝の背中にアイスを押し当てた。
「んなぁっ!?冷てぇ!!」
「そうだよ、大輝。それはダメ」
てつくんは、静かに、でも真っ直ぐ続ける。
「僕は、いつも必死についていくので精一杯です。正直、青峰くんの感覚は分かりません。でも……どんなに実力差があっても、手を抜かれたり、流されたりするのは、僕が相手なら、絶対に嫌です」
大輝が、黙る。
「それに」
てつくんは、少しだけ視線を落とした。
「青峰くんよりすごい人なんて、きっと、すぐ現れます」
私は、その背中を見ながら言った。
「大輝。私にも、まだ負けたりしてるでしょ?そんな考え、甘すぎるよ」
少しの沈黙。
それから、大輝は笑った。
「……はは」
「そーだな」
でもその笑顔は、どこか、軽すぎた。
私は、その横顔から目を離せなかった。
――今、何かが、確実にズレ始めている。
そんな予感だけが、胸に残っていた。