第2章 帝光中バスケ部に入るきっかけ
何の話なのか分からないまま、放課後。
言われた通り屋上に向かったけど、そこには誰もいない。
(来たけど……誰もいないじゃん)
帰ろうとした、そのとき。
――ガチャ。
扉が開き、現れたのは赤い髪の少年だった。
ただ立っているだけなのに、独特の雰囲気と貫禄がある。
「やぁ、待たせてしまってすまない。君が茶郷雫か?俺は帝光中バスケットボール部、副部長の赤司征十郎だ。よろしく」
「……茶郷雫です。よろしくお願いします」
「早速だが、本題に入らせてもらう」
赤司は迷いなく言った。
「雫、バスケットボール部にマネージャーとして入らないか?」
あまりにも唐突で、言葉が出なかった。
マネージャー?
そう思った瞬間、赤司は微笑んで、さらに予想外のことを口にした。
「表向きはマネージャーだ。だが君は――“キセキの世代”と同格の才能を持っている」
心臓が、どくりと鳴る。
「その才能のせいで、バスケがつまらなくなったんじゃないか?」
……図星だった。
「君はまだ中学生だ。身長が小さくても通用する。だから、選手としては補欠。それでもいい。俺たちの勝利のために、力を貸してほしい」
意味が分からない。
私は女だし、長く続くはずもない。
「……話にならない」
そう言い捨てる。
「“キセキの世代”には興味あるよ。一度くらい、勝負してみたいとも思う」
でも、と。
「君には分からないでしょ。私がどんな思いでバスケを辞めたか。凄いじゃなくて、化け物みたいに見られた気持ち。だから私は、もうバスケをするつもりはない」
少しの沈黙のあと、赤司は静かに言った。
「……そうか」
そして、まっすぐこちらを見る。
「では、これは俺個人のお願いだ」
「今、“キセキの世代”の一人が、君と同じ道を辿りかけている。そんな時、一番分かってやれるのは君だと思っている」
「同じ思いをさせないために。どうか、バスケ部に入って支えてほしい」
……ずるい。
そんなこと言われたら、断れるわけがない。
「……分かったよ」
ため息混じりに答える。
「そこまで言われたら、断る理由がない。帝光中バスケ部、マネージャー兼補欠。やらせてもらう」
「よろしくね、征くん」
「あぁ。よろしく、茶郷」
こうして――
今日から私は、再び体育館に足を運ぶことになった。