第8章 5月
「集合!!」
コーチの声が体育館に響く。
全員が集まると、少し空気が変わった。
「全中予選まで、残り二か月を切った。ここからは、監督が指揮を執る」
監督……?
正直、全然知らない。
「えー……」
「マジかよ……」
「あの、どんな方なんですか?」
「私も気になる!」
そんな声が上がる中、後ろから落ち着いた声がした。
「そうだな……」
「いっ!」
珍しく、大輝が驚いた声を出した。
「挨拶しておこう。監督の白金耕造だ。よろしくな、黒子くん、茶郷さん」
「え?どうして僕の名前を……?」
「当然だ。選手の名前は、すべて覚えている」
『チワス!』
「硬くならんでいい」
どこかで見たことがある気がする……。
そう思っていると、監督が続けた。
「練習には、よく来ていたよ」
「そうなんですか?」
「あっ!二階から練習見てたおじさん!」
思わず叫んでしまった。
「バッカ雫!」
大輝に即ツッコまれた。
「できるだけ選手の素の部分を見たいそうだ。だから茶郷の言う通り、二階などから黙って見ていることが多かった」
「思ったより、優しそうな方ですね」
「私もそれ思った!!」
『それはない』
「え?」
「今までは、のどかだっただけだ。ここからが本当の練習になる。遥かにハードだが、心配するな。若いうちは、何やっても死なん」
「ただただ、鬼のように厳しいだけだ」
……なるほど。
そして、もう一つの報告があった。
「赤司」
「はい」
「今日付けで、虹村に代わり、赤司征十郎をキャプテンとする」
静まり返る体育館。
いつかは来ると思っていたけど、思ったより早かった。
虹村先輩には、何か事情があるんだろう。
最近、スマホを見て暗い顔をすることが多かった。
「……え?」
「マジで?」
「勝つための決定だ。認めろ。虹村は、今までよくやってくれた」
「ありがとうございます」
そうして、帝光中学はまた一つ、大きく形を変えた。