第3章 蒼の侵食
電車から降りると、手を引かれてただ歩く。
繋がれた手は、先程のように熱くはなかった。
大切にしてるって言われたのに、拒否された。
もうわけわかんない。
あれは、それなりに気持ちがあるってことじゃないの?
物として大切なら、それでいいから…受け入れて欲しかった。
「婚約破棄とか、別にしなくていいから。
他の子抱いたりもしないし。
ただ――僕の気持ちが葉月ちゃんと同じじゃないって、わかって欲しい」
玄関の中に入ると、サングラスを外した悟さんが私と目を合わせようとする。
でも私はただ、何もない空を見つめていた。
上げて落とさないでよ。
悟さんは、私との子供が欲しいの?
興味なさそうなフリして、強い子が欲しいの?
「いい。
大丈夫だよ。
両家は私が死ねば大人しくなる」
「それ、本気で言ってる?」
悟さんの声が今までにないくらい、低くなった。
底から冷えるような、地を這う声。
「はぁ、子供ってほんと面倒臭い。
極端過ぎない?
僕が生かしてあげるって言ってんの。
僕しか君を助けられないでしょ?
他の子抱かないって言ってるのに、なんでそんなこと言うの」
"生かしてあげる"。
そう、私たちの関係はずっと悟さんが優位。
私が優位に立てるとしたら、ちゃんと悟さんの子供を産んだ時だけ。
それでも…好きになってしまった私は、いつまでも下位。
「お…おこらない、で…」
悟さんの怒気を孕んだ声に、少し肩が震えていた。
なんで…"好き"って嘘をつかないの?
そう言えば、簡単に私を操れるでしょう?