第3章 蒼の侵食
婚約者って言ったんなら…手を繋ぐくらいしてよ。
自分の中でありえない思考に至る。
「悟さん。
駅で待っててって、メッセージしたんだけど…」
「ん?あぁ…別にどこに迎えに来てもいいでしょ。
この僕が迎えに来てあげたんだよ?
僕がどんだけ大切にしてるか、わかって欲しいよね」
大切…にしてたの?
初めて会った日にあんな抱き方しといて?
手だって繋いでくれないくせに。
なんで私は、こんなに手を繋いで欲しいんだろう。
恥ずかしいだけなのに。
「学校に来たら…ああやって女の子たちに囲まれるのわかってたから、やだった」
「なに?嫉妬?可愛いね」
この人にはどうせ伝わらない。
きっと、揶揄うことしか考えてないんだ。
どんどん頬がむくれていく。
駅に近付いていくと、後ろから手を掴まれて、一瞬心臓が止まる。
どうしよう…一気に手が熱くなって、心臓が速く動き過ぎて熱い。
「嬉しい?」
繋がれた手は、普通の繋ぎ方ではなかった。
大きな指が私の指と絡んで、離れないようにぎゅっと握られる。
答えることはせずに、ただ黙って、悟さんの方は見なかった。
顔が熱くて、きっと見せられる顔じゃない。