第3章 蒼の侵食
駅までの道を歩く私の少し後ろで、歩幅を合わせながらついてくる悟さん。
その足の長さで私の速さに合わせるの、大変だろうな…。
「悟さん。
それで女子高生の後ろを歩かないで。
通報されちゃう…」
「え?JKの後ろ?
僕、婚約者の後ろ歩いてるんだけど」
婚約者…ただの体のいい言い回しだろうが、"女子高生"という私の異端さよりも、優先された気がした。
私の後ろを歩く、真っ黒で長身で目隠しをした婚約者の姿を思い浮かべながら前を向く。
それから私たちはひと言も話さず、電車に乗った。
走り始めて少しすると、お尻に違和感。
悟さんは隣に立っていて、傍から見たらただの他人のようだった。
気付かれないように、身体の奥から冷えてくるような嫌悪感に耐える。
そうしていると、悟さんの手が肩に回って、頬を突かれた。
その手は髪を撫で背中に回り、そのまま腰へと落ちていく。
このままだと、気付かれる…!
「さ、悟さん……」
「婚約指輪。
どんなのがいい?
やっぱ欲しいよね?」
耳元に近付いた唇から息がかかる。
お尻を撫でていた嫌な手はなくなった。
ずっと腰にあった悟さんの手だけが残って、お尻を撫でてからまた上に戻ってくる。
頭を引き寄せられて、頭頂部に柔らかいものが触れる。
ザワついた心臓がゆっくりと規則正しくなっていく。
ふぅ…とひと息吐いて、悟さんに身を寄せた。
「悟さんが選んだ物なら…どんなのでも嬉しい」
彼の温度が伝わって、身体が温まっていく。
一緒に電車に乗ってくれてありがとう、悟さん。