第3章 脹相の場合
「悠仁は部屋に帰った。病人の見舞いに二人も三人も来ても仕方がないだろう」
「確かにそうですね~。お気遣いありがとうございます!」
脹相の言葉に茉奈は納得すると素直に部屋へと戻る。買ったものを渡しそびれた脹相は、迷ったものの靴を脱ぐと茉奈の後に続いて部屋へと入った。
高専の寮だからかシンプルなインテリアに、悠仁の部屋のような雑多な感じは無く似ているとすれば壁のポスターが貼られているくらいだろうか。
アイドル、と呼ばれるものだろうか。男性複数人が写るそのポスターにはグループ名のような英語が並んでいる。
「おぉ!オレンジゼリー!!嬉しい!」
無言で渡された袋の中身に喜ぶ茉奈はいそいそとキッチンに向かう。
中身を冷蔵庫に仕舞うとストックしているスティックコーヒーをマグカップに入れ、ポスターを見つめ続ける脹相に声をかけた。
「脹相さん、コーヒー飲みます?」
「…茉奈はこの男達が好きなのか?」
「はい?あぁそれですか、私もよく分からないんですよね~。部屋殺風景だから友達から貰ったものを飾っただけで」
はい、とコーヒーを脹相に渡すと茉奈はスプーンを加えてオレンジゼリーの蓋を開ける。その目はキラキラとしていたが、脹相はふとその瞳に違和感を感じ茉奈の額に手を当てる。
「…さっきより熱い」
「ふぁ?ふぉーでふは???」
ゼリーをモグモグと食べ進めていた茉奈だったが、脹相の真剣な顔にふと思う。脹相は”弟大好き”な人だ、いつも虎杖に「お兄ちゃんと呼んでくれ」と言っている姿はもはや高専名物みたいなもの。その虎杖と離れて脹相が一人で部屋に来るとは。
それにしても、兄弟とは言っても先輩とは似ていないんだよなぁ。元気で明るい先輩の顔と、切れ長でクールな印象の脹相の顔。顔でモテるなら確実に脹相だろう、眦のクマは気になるが。雰囲気でモテるのは圧倒的に先輩だろうけど。
「熱出てきたかな。それにしてもよく気付きましたね、自分でも気付いてなかったのに」
「悠仁の次に見ているからな」
表情を変えず言われた一言に思わず「んグっ!!!?」とゼリーを誤飲しそうになり茉奈は変な声が出る。不思議そうな表情の脹相に背中をトントンと優しく叩かれゼリーは正しい位置(食道)へと戻っていき一安心してスポドリに手を伸ばす。