第8章 白銀の世界に
みんなと一緒に家に帰ると、母がいた。
父は仕事。
「お前ら、静かにしろよ。
絶対に何も触るな」
アキがデンジくんたちに釘を刺し、家の中に入る。
久しぶりにアキが、この家に足を踏み入れた。
あの日からアキが触れることをやめた、家族という間柄の人たちが住んでいる家。
母がお茶やお菓子を出してくる。
お菓子は一瞬でパワーちゃんの懐に消えた。
パワーちゃんの頭には私の帽子を被せておいた。
ここに来るまで隠してはいなかったが、私の家族にその角を見せるわけにはいかなかった。
私も何故その角が生えているのかわからないが、何か触れてはいけないものだと思っていた。
マキマさんが私を殺せと言った。
だから、母には少しの違和感も抱かせない。
他愛もない話をして、窓の外を眺める。
牡丹雪が雨のように落ちていく。
出るまでに止むといいな。
「結那」
名前を呼ばれて振り向くと、視界いっぱいにアキが溢れる。
唇が柔らかく重なっていた。
アキが少し離れて、お茶を淹れ直しにキッチンへ行った母と目が合う。
デンジくんたちは窓に近付き、雪を眺めていた。
「あ、アキっ…お母さんが……」
キッチンの方へ振り向いたアキが会釈をした。
アキの表情はわからないが、母は微笑んでいた。