第8章 白銀の世界に
喫茶店から出て、マキマさんと別れる。
繋がれた手が痛かった。
アキはひと言も発さず、ただ私の手を引いて前に進む。
「アキ……アキ、痛いよ…」
少しだけ緩まった手は離れることなく、家に着くまでその空気が乱れることはなかった。
玄関の扉を開け、真っ直ぐアキの部屋へ向かう。
アキは…私を殺すという命令を受け入れた。
それは、アキにとって私の存在がそれだけのものだったのか、公安のデビルハンターというのはそういうものなのか、それとも…別の何かがあるのかはわからない。
だが、それでもいいと思った。
殺されてもいいと思った。
アキになら…。
そうしたら、すぐにアキに会える。
私、アキがいない未来は想像出来ないの。
「結那は…デンジにとって、家族みたいなもんだ。
マキマさんは何の為に……」
アキの手が震えている。
「アキ、大丈夫。
私は知らないままでいるよ」
アキと同じ場所に行きたいけど、アキがそれを望んでいないのはわかっている。
だから私は、アキが辛いことをしなくていいように、不安も辛さも全部飲み込んで、アキがいる世界から目を背ける。
大丈夫、私の世界にアキがいるから。
このアキは――私だけのもの。
震えた手を握って口付けると、震えが治まっていった。