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【チェンソーマン】凍てついた幼心〈早川アキ〉

第6章 壊れないもの


デンジくんは寝てしまい、パワーちゃんは静かにニャーコと触れ合っている。
アキは…間にあったペットボトルや空き缶を寄せて、私の膝に頭を乗せた。


「……何も失いたくない。
デンジもパワーも…結那も、生きていて欲しい。
生きろよ」


毛先を撫でて顔を上げたアキと唇が重なる。


「パワーちゃん、起きてるよ」

「どうせ、聞こえてない」


微笑んだアキは起き上がり、髪を撫で額に口付けて、ベランダに向かう。
その背中を見つめていた。
幸せの裏に隠した、喪失感が少しだけ透けて見えた気がした。

私も立ち上がってベランダへ向かう。
煙を吐き出したアキと目が合う。

アキが煙草を吸っているところを久しぶりに見た。
アキは、煙草を消さなかった。

煙草に何か書いているように見える。
それは、銘柄ではなさそうだ。
近付いて見てみると、先は少し燃えて消えていたが…"Easy revenge!"と書かれていた。
Eが少し燃えている。

アキが吸うと、火種を赤くしながら文字を消していく。
煙草から口を離し、吐き出さないままテーブルに手をついて、手を伸ばしてくる。

手を取りながら近付くと、キスをされた。
煙草の匂いと味がする。
いつもは受動喫煙すらさせないアキが初めて、私に煙草を教えた。

顔を反らして煙が吐き出される。
白い煙は夜の闇に溶けていった。


「美味しくない」

「うん。吸うなよ」

「どうしてもダメ?」


アキがいなくなった未来は考えたくないけど、そうなったら私は…吸うかもしれない。
アキが吸っている煙草を…。


「ダメ。俺もやめる」


騒がしかった夜が静寂に包まれて、煙草の煙と匂いと…アキの吐き出す息の音が、その瞳の色に消える。


「アキ…アキの心に空いた穴は、私が埋めるよ。
だから、笑っていて。
辛さも苦しみも、私が半分もらうから…
そしたら、少しは軽くなるでしょ?」

「うん、軽くなった。
結那、俺が死んだら…泣いて」


震えた小さな声は、私の中に溶けていった。
静かに、ただ微笑みながら、心は震えていた。


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