第5章 内側に隠した鈍痛
アキの抱き締める強さに耐えながら、手櫛をするように髪を撫でていた。
コンコンと扉がノックされる。
誰だろう…デンジくんやパワーちゃんはノックをしないはず…。
公安の制服を来た男女が入ってくる。
アキの腕が離れて、グッと目元を拭うのを見てから離れる。
お辞儀をして、恐らく、デンジくんたちが散らかした椅子を片付ける。
転がっていた漫画を持って、アキの膝にある折れた煙草をポケットに入れた。
この煙草は――アキが大切な人の死を苦しんだ証。
何も考えないように、ただ静かに、病室を整えて、アキの髪を結わえる。
そうしないと、涙が零れそうだったから。
一番傷付いているアキの前では泣きたくなかった。
「結那……家で待ってろ」
笑ったアキの目元は赤かった。
「うん!ご飯、作っておくからね」
ピンッと立ったアキの髪の先に少し触れ、前に立つ。
横髪を指に絡めながら頬を撫でて、後ろに流していく。
サラッと戻った髪を見て、手を離した。
また危ないことをしようとしているのは、気付いていた。
でも、何も言わなかった。
アキが決めたことなら、私はそっと支えるんだ。
握られた手を名残惜しく思いながら、指先が離れるまで、見つめ合ったまま離れていった。
公安の方にお辞儀をして、アキと微笑み合いながら、病室を後にした。