第4章 燻る何か
少し考えてからベランダに出る。
椅子に座って煙草を吸うアキに近付くと、灰皿に火種を押し付けた。
「あんま吸ってるとこに来んな。
長生き出来ねぇぞ」
「アキ…アキもしようよ。長生き」
一度、目を逸らして、また見つめてくる。
伸びてきた手が私の腕を掴んで引き寄せた。
アキの膝を挟んで、私の影が落ちたアキを見つめる。
「銃の悪魔を殺せたらそれでいい。
――そう思ってた。
したかったわ、長生き。
結那と」
悲しげに笑うその表情が、私の胸を締め付けた。
痛くて苦しい。
アキはもっと、辛いのかな。
アキの寿命が何故2年しかないのかは知らない。
聞こうと思ったけど、それは私が踏み込まなくていいところだと思った。
アキも言わなかった。
冷たい風が髪を揺らす。
私たちを阻む柵みも、何もかも、この風が連れ去ってくれたらいいのに。
「結那、キスして」
名前を呼ばれるのは嬉しいはずなのに、苦しかった。
静かで僅かに甘えたようなその声も、"マキマさん"に聞かせるのだろうか。
アキが本当に呼びたいのは、私の名前ではないはずなのに。
二人で生きていくには、あまりにも短過ぎる時間で…アキと一緒にいるには、あまりにも重すぎる想いで…もう何もかも捨てて、忘れてしまいたい。
アキの言葉を拒まないのは――甘えを受け取る為。
そう、誰に言い訳をしたのだろう。
触れた熱が恋しかった。