第3章 在りし日の温もり
私はたぶん、他の子よりも可愛かった。
この時はブスだと思っていたけど、後になって気付いたんだ。
アキが教えてくれた。
可愛さ等ないと思っていたのは、私は虐め…とまではいかないけど、嫌がらせを受けていた。
女子には話しかけても無視されて、男子には「ブス!」と言われながら物を奪われて、返してと言っても、必死な私を見て笑っていた。
ある日、その男子の嫌がらせが域を超えた。
廊下を歩いていると、後ろからいきなりズボンを下ろされる。
赤いリボンをつけた白猫のキャラクターの下着が晒された。
恥ずかしさと恐怖でその場にしゃがみ込み、俯きながら必死に涙を我慢していた。
胸が苦しい…モヤモヤする。
ヒソヒソと話す女子と、キャハハハと笑う男子。
どうして私はこんなに惨めな思いをしなければいけないのか…この時はただ、嫌で嫌で仕方なかった。
「結那、もう大丈夫だ」
廊下が騒がしく気付いたのか、アキが私の肩を抱き、着ていたパーカーを私の腰に掛けた。
「お前ら、そんなんじゃモテねぇぞ
結那のこと、好きなんだろ
こいつは、優しい男が好きだ」
このアキの言葉が私の心を動かし、これからの状況さえも動かした。
私の中で花火が打ち上がったような、内側が響く音。
アキが…好き。
この日が、アキを好きになった日。
それからは、"細川結那は優しい男が好き"というのが知れ渡り、嫌がらせを受けていたのが嘘のように、男子たちは優しくなった。
女子はそんな私を妬んでいたようだが、アキが笑顔を振り撒いていた。
アキが近くにいることで、みんなが話しかけてくれる。
アキはそんなチャラチャラしたことは嫌いなはずなのに、私の為に嫌なことをしてくれていた。