第3章 在りし日の温もり
アキはいつも優しかった__。
―――
アキと私は、産声を上げる前から一緒だった。
お互いの母が親友同士で、結婚しても、家まで隣にする程仲が良かった。
隣と言っても、数km離れていたが…。
アキの家は雪原の中に建ち、なんだか少し、綺麗だった。
きっとそれは、冷たい雪が太陽に照らされて、燦然と煌めいていたから。
その中で淡く、でも確かにそこにあった。
まるで――アキみたいに。
「アーキー!」
柔らかい雪がはらはらと舞い落ちて、固まった地面の雪に降り積もっていく。
その雪を踏みしめ、前を歩くアキに駆け出した。
赤いランドセルを背負って、ボコッボコッと中身を揺らしながら、距離を縮めていく。
「走んな…あ……」
雪を踏みしめた足はズルッと後方へ投げ出され、気付いた時には顔を固い雪にぶつけていた。
鼻を打って、痛みに涙を滲ませながら、駆け寄ってくれたアキに笑顔を見せる。
霞む視界はクリアになって、頬は温かかった。
涙目になっている私に気付いたアキが、指で優しく拭ってくれたのだ。
そのまま頬を包んで撫でてくれる。
「冷てぇ…鼻赤ぇぞ」
クスクスと笑いながら、鼻先をちょんっ…と指で突かれる。
「そんな笑わないで!」
一度アキの胸を叩いてそのまましがみつき、睨み上げる。
でもその手はすぐに掴まれて、また歩き出した。
私はアキが大好きだった。
でもこの頃は、兄みたいな…家族みたいな存在で、恋ではなかったと思う。
明確にアキを好きになったのは、これから少し先のこと__。