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Feline Journey( ONE PIECE )

第1章  🐾




部屋の扉を閉めた瞬間、街のざわめきが遠のいた。
小さな借り部屋。
古びた木の床、必要最低限の家具、年季の入ったベッド。
それだけなのに、不思議と心が落ち着く。
はゆっくりと服を脱ぎ、壁にかかった小さな鏡に映る自分を一瞥した。



シャワーを浴びる。
温水が肩を叩き、張りつめていた神経を少しずつ解きほぐしていく。


血の匂い、鉄の味。
すべてが、水とともに流れ落ちるような気がした。
でも、完全に消えることはない。
それを知っているから、彼女はただ黙って体を洗い続けた。


ベッドに潜り込むと、すぐに力が抜ける。
この街では、人の姿で過ごす時間がほとんどだ。
だが、ここへ来る前は違った。
移動も、眠りも――猫の姿の方が圧倒的に楽だった。


今でも、部屋にひとりの時や眠る時は、つい猫に戻ってしまう。
理由は単純。 移動が楽で……ベッドが広いからだ。


ふわり、と体が縮む感覚。
柔らかな毛並みがシーツに触れ、小さな肉球がベッドを軽く踏む。
大きなあくびをひとつしたあと、くるりと丸まり
尻尾を抱え込むようにして、は静かに眠りについた。

夢の中でも、耳はぴくりと動き、街の音を拾い続ける。
警戒は、決して解けない。



次に目を覚ましたとき、窓の外はすでに明るかった。
人の姿に戻り、軽く身支度を整える。
髪を梳き、服を着替え、鏡の前でいつもの笑顔を練習する。
柔らかく、優しく、無害に。
それが、この街で生きるための仮面だ。



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